紅景天は、中国最古の薬草書物である「神農本草経」に上薬として記載されています。上薬とは、西洋薬のような即効性はないが、体質を強化し、他の薬の副作用を軽減するとされています。
紅景天はチベットなどの高寒地帯に生息するベンケイソウ科の多年生草本で、別名はイワベンケイ、チベット人参、ロディオラとも呼ばれています。
清の第4代皇帝、康熙帝(こうきてい)は中国の西北部で反乱軍に苦戦し、兵士が戦意を失いかけた時に、森に住む老人が紅景天を差し出し、反乱軍を鎮圧したとされる伝承があります。
この時、康熙帝は紅景天に「仙人に賜りし草」と称したと伝えられています。

紅景天の有効成分

紅景天の注目成分はサリドロサイドとロサビンなどのグリコシド配糖体類です。
その他にも、必須アミノ酸、有機酸、各種ビタミン、主要ミネラルおよび、カリウム、リン、鉄、亜鉛、コバルト、モリブデン、チタン、マンガンなどの貴重な微量元素をはじめ、40余りの有効成分が含まれています。

紅景天のグリコシドは、脳内細胞を活性化する

漢方では紅景天は、主に滋養強壮、疲労回復などに用いられてきましたが、アメリカでは、紅景天に含まれるサリドロサイドとロザビンなどのグリコシドが、神経伝達物質ドーパミンと脳内神経細胞ニューロンの電気活動(シナプス)の活性効果があることが確認されました。
これにより認識・記憶・学習能力、および集中力を向上させるとして、アルツハイマーや物忘れの予防に注目されています。

紅景天のグリコシドは、血糖値を抑制する

またこれらグリコシド配糖体に、糖質を分解する酵素、アルファ・グリコシダーゼの活性を阻害する作用も発見され、血糖値の抑制に効果があることも確認されています。

紅景天のグリコシドは、メラニンの生成を抑制する

シミやそばかすの原因となるメラニン生成細胞に働きかけ、紫外線による黒色メラニンの生成・沈着を防ぐ作用が確認されていることから、美白機能を目指した化粧品の素材として使用されています。

紅景天のその他の効果

紅景天はアトピーをはじめアレルギー症状にも、有効との報告がなされています。
さらに「食べる酸素」とも呼ばれ、赤血球が酸素をより多く取り込み運動能力を高めるだけでなく、体内酸素供給の改善は、基礎代謝の向上に繋がり、冷えなどの解消にも良いとされています。
古くからチベットやヒマラヤでは、低酸素による高山病の緩和に用いられ、動悸や息切れの症状に使用されています。
近年では、中国のオリンピックの候補選手が高地トレーニングの際に使用するなど、その有用性は世界各地で認められています。宇宙飛行士の訓練にも紅景天を用いたロシアやデンマークでは医薬品として認可されています。